クリプトコリネ・ロンギカウダはマレーシア本島、サラワク州、インドネシアのスマトラやブルネイ・ダルサラームまで広い範囲に分布し、川の中流域、上流域、湧水や沼地、畑の溝に至るまでバラエティーに富んだ生活環境を持っているクリプトコリネである。
自生地の多くが軟水で弱酸性であるが、カルシウム分を含んだ中性、弱硬水でも生育する。土壌は森林の堆積物や粘土質、砂礫に至るまで様々で、時として浮遊状態でも群落を形成することがある。若干富栄養気味の環境を好み、水中では草体が大型化するため根系は大きく発達する。
ピートスワンプなど、流れの澱んだ環境のほうが大型化し、水流の強い場所などに生育している株は水の抵抗を受けにくいようコンパクトな草体になる。
ある程度富栄養で水に薄く泥が混じっているような川でも生育が確認されているが、大雨などで土砂が流れ込む川は葉の凹凸面に土砂が詰まってしまい窒息死してしまうため生育出来ない。
Cryptocoryne longicauda Becc. ex Engl.
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Kingdom (界) Plantae
Division (門) Spermatophyta(Magnoliophyta)
Class (綱) Monocotyledonrae(Liliopsida)
Order (目) Alismatales
Family (科) Araceae(the Arum Family)
Subfamily (亜科) Aroideae
Tribe (連) Cryptocoryneae
Genus (属) Cryptocoryne
Species (種) Cryptocoryne longicauda
Variety(var.) (変種) None
Synonyms: Cryptocoryne
caudata, Cryptocoryne
johorensis
Distribution: Peninsular malaysia, Sarawak malaysia, Sumatra, Brunei Darussalam
Known natural hybrids: None
Typical habitats: Lowland swamp forest.
クリプトコリネ・ロンギカウダの花
花期になるとロゼット葉rosette leafの生長点growth pointより花芽flower budを上げる。花芽は舷部limbの先にある旗Flag(長い尾のような部分)から成長し、時として50pもの長さに達することがある。しかし湿度が低いと曲がったり、折れたりしてあまり長くは伸びず、自然下でも長く伸びきったクリプトコリネ・ロンギカウダの花を見ることは珍しい。
旗Flag(長い尾のような部分)の下に楕円体ellipsoidalの蕾をつけ、それが割れて開花に至る。
本種の仏炎苞spatheの筒部tubeは肉厚で長く伸びる性質があり、上陸株では約10p、水中株では30pほどの花を形成する。筒部に筋が浮き出しゆるくねじれる。
舷部limbのネック周囲は赤紫色〜黒紫色で円形、円のほぼ中心部分にネックがあり、筒部tubeへと通じている。舷部limb表面はいぼ状突起tuberculateがあり、開花すると強い魚の腐敗臭のような匂いを放ち花粉媒介者pollinatorを仏炎苞spatheの中へと誘い込み受粉する。
クリプトコリネ・ロンギカウダは虫媒entomophilyで閉鎖花cleistogamous flowerを持たない。
クリプトコリネ・ロンギカウダの葉
クリプトコリネ・ロンギカウダの水上葉emergent leafは円形に近い心臓形cordateで先端は鋭形acute、縁は深波状sinuateでなおかつ凹点foveolateがあるのが特徴で、ロンギカウダは葉の形状からの判別が容易である。
主脈main vein、側脈lateral vein、細脈veinletが大きく盛り上がり、脈間の葉はへこむ。葉には厚みがある。
葉は通常グリーン〜茶褐色、赤褐色で、葉の裏は白色のような明るい緑色から褐色に至るまでさまざまなバリエーションがあり、葉の表面には細かい微細突起muricateを持つ。通常葉身laminaは8p〜13pと大型になるが、葉柄petioleはあまり伸びない。
水中葉submerged leafは心臓形cordateで先端は鋭形acute、縁は深波状sinuateでなおかつ凹点foveolateがあるが、水上葉と比較すると小さくなる。水上葉ほどではないが主脈、側脈、細脈が浮き出る。色は濃い緑色から褐色、時には赤色を帯びており、葉身laminaは8p〜13p、葉柄petioleは水深によっては60p以上も伸びる事がある。
稀に主脈、側脈が白く変色する斑入りrosanervig個体が出る事があり、とても珍しい現象である。
クリプトコリネ・ロンギカウダの根系root system
本種はその大きな草体を支えるために、しっかりした根系root systemを形成する。地下茎underground stemは太くて長い塊根root tuberを中心とし地下匍匐する。塊根root tuberより数多くの不定根adventitious rootを出し、より多くの栄養分を確保する。
匍匐根茎creeping rhizomeの節nodeや塊根root tuberからは匐枝(ストロン)stolonを出し、先端の芽はロゼットや葉束をつけて、節間ちぎれると独立した植物となる。世代を重ねて古くなったストロンは独立する。匐枝はかなり太くしかりとしている。
クリプトコリネ・ロンギカウダは植物体の中心は地下にあると言って良いほど大きな地下根系を持っており、塊根には主にデンプン質等をため込み、千切れた塊根root tuberの節nodeからは容易に新しい植物体が出現する強靭な生命力を持っている。
クリプトコリネ・ロンギカウダは川の瀬や岸に大型の群落を形成し、植物の状態が良いと林床全体に繁茂する。基本的に陰性植物であるが、時折陽性部分にも展開している。
通常は川などに生育しているが、土壌が絶えず湿っており、十分な湿度が確保できる場合には通年浸水しないような陸上にも生育する。これは水上葉の葉肉を厚くし、保水性が保たれるロンギカウダならではの特性でもある。